アロマテラピーが「香りで癒される」だけでなく、脳の働きに良い影響を与える可能性がある
ことをご存じですか?
アロマテラピーは、ただ心地よい香りで気分をほぐすだけではありません。近年の研究では、
嗅覚刺激が脳の記憶や注意をつかさどる海馬を活性化し、認知機能の維持に役立つ可能性が
示されています。医療や介護の現場でも、認知症予防プログラムや夜間の興奮をやわらげる
ケアとして精油が取り入れられ、穏やかな生活リズムづくりに貢献しています。本記事では、
シニア世代でも負担なく試せる精油の例や安全な使い方のポイントをやさしく解説します。
アロマが認知症予防に注目されている理由
私たちが香りを感じる嗅覚は、脳の「海馬(かいば)」という記憶を司る部分と密接に関係
しています。香りの刺激は脳に直接届き、神経細胞の活性化につながると言われています。
とある研究では、朝にローズマリーとレモン、夜にラベンダーとオレンジスイートを使用した
アロマ療法で、高齢者の記憶力が向上したという報告もあります。
Effect of aromatherapy on patients with Alzheimer’s disease(論文タイトル)
Daiki Jimbo, Yuki Kimura, Miyako Taniguchi, Masashi Inoue, Katsuya Urakami(著者)
Psychogeriatrics 9 (4): 173-179, 200※(掲載誌 / 年)
高齢者にもやさしいアロマ精油の選び方
高齢者の方には、刺激の少ない・香りがやさしい精油がおすすめです。以下のような精油は、
安心して取り入れやすいでしょう。
- ラベンダー:リラックス・安眠サポート
- オレンジスイート:気分を明るく
- ゼラニウム:自律神経のバランスを整える
- レモン:集中力アップ、脳の活性化
肌が敏感な方も多いため、芳香浴(香りを空気中に拡散)中心の使い方が向いています。
ラベンダー(真正ラベンダー)(Lavandula angustifolia)
ラベンダーのやわらかな香りは副交感神経を優位にし、心拍数や血圧を穏やかに整える働きがあります。寝つきが悪い夜にディフューザーで香らせたり、ぬるめのお湯に1~2滴垂らして半身浴をすると、深い呼吸を促し入眠をサポートしてくれます。主要成分のリナロールと酢酸リナリルには鎮静・鎮痛作用も確認されており、軽い頭痛や肩こりを感じるときのトリートメントオイルにも適しています。うすめればスキンケアにも使え、かゆみや日やけ後のほてりをやわらげるともいわれています。血圧をさげる性質が少しあるので、低血圧の方は長時間の使用をひかえめにすると安心です。
オレンジスイート(Citrus sinensis)
完熟オレンジの甘い香りには、幸福感をもたらすセロトニンやドーパミン分泌を後押しするといわれるリモネンが豊富です。気分転換やストレス軽減に役立ち、気分が落ち込みがちな朝や、人前で話す前など、緊張をほぐしたい時には、ティッシュに1滴たらして深呼吸すると気持ちがふっと明るくなります。胃の蠕動運動を穏やかに促すため、食欲不振や軽い胃もたれ時に腹部を時計回りに優しくマッサージするのもおすすめです。子どもやペットがいる空間でも比較的あんしんして使える柑橘オイルです。酸化すると肌への刺激が出やすいので、開封後は半年ほどで使い切ること、冷暗所で保管することがポイント。夜よりも朝のルームスプレーとして吹きかけると、一日のスタートを前向きにしてくれます。
ゼラニウム(Pelargonium graveolens)
シトロネロール、ゲラニオール、リナロールがバランスよくふくまれ、ふわりと甘い花とみどりの香りがただよいます。交感神経と副交感神経の揺らぎを整えると同時に、ホルモンバランスの変化によるイライラやむくみを和らげる手助けをします。月経前の気分変動や更年期のホットフラッシュを穏やかにサポートするといわれています。主成分のシトロネロールやゲラニオールには皮脂バランスを整える作用があるため、スキンケア用の美容オイルにブレンドすれば、乾燥と皮脂過多が混在する年齢肌のケアにも◎。皮ふに塗る際は1%以下に希釈し、まずパッチテストを行うとトラブルを防げます。虫よけ作用も高く、アルコールスプレーに数滴たらして屋外に持ち歩くと便利です。
レモン(Citrus limon)
リモネンとβ-ピネンが中心で、きりっとした酸味の中にほのかな甘さが感じられる香りです。レモンのシャープな香りは脳をすっきり覚醒させ、集中力や記憶力を高めるという報告があります。勉強やデスクワーク前にデスク上のアロマストーンに2滴落とすだけで、気分がリフレッシュし作業効率が向上しやすくなります。抗菌・消臭力も高いので、キッチンやごみ箱まわりの空気リフレッシュにも向きます。さらに血流促進作用が期待できるため、足湯に使うと重だるい脚のリセットにも。光毒性があるため、肌に塗布した直後の日光浴は避けると安心です。
安全に使うために
- 妊娠中や持病がある方は使用前に専門家へ相談しましょう。
- 皮膚塗布時は必ず植物油で1%以下に希釈し、パッチテストを行ってください。
- 柑橘系(特にレモン、オレンジ)は酸化しやすいため、開封後は6か月を目安に使い切ると香りと品質を保てます。

それぞれの香りをシーンに合わせて取り入れ、心身のセルフケアに役立てて
みてください。
簡単にできるアロマの活用法【家でできる】
手軽にできる方法としては、以下のような使い方がおすすめです。
- ティッシュに精油を1滴垂らして枕元に置く
- マグカップにお湯を入れて精油を1滴、ゆっくり蒸気を吸う
- 芳香器(アロマストーン・ディフューザー)を使用

大切なのは香りを楽しむ時間を習慣化すること。
一度に長時間使うよりも、短時間でも毎日続けることが効果的です。
まとめ
認知症予防では、栄養バランスの良い食事、適度な運動、質の高い睡眠に加え、香りの刺激で
脳を活性化させるアロマテラピーも注目されています。今回はラベンダーやオレンジスイート、
ゼラニウム、レモンを紹介しました。使用時は植物油で1%以下に希釈し、ディフューザー、
ハンカチ芳香、フットバスなど無理なく取り入れることがポイントです。事前にパッチテストを
行い、持病や服薬がある場合は医師や専門家に相談すると安心です。香りを使った嗅覚トレー
ニングが軽度認知障害の進行を抑える可能性を示す研究も報告されており、毎日の暮らしに
香りの癒しを取り入れることで、認知症予防だけでなく心豊かな生活を送ることにもつながる
ことでしょう。
ぜひ、香りを、人生にささやかな彩りを添える大切な存在として日常に取り入れてみてください。
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