ペットを飼っているけれど、アロマテラピーのある暮らしにも憧れる――そんな方は多いのでは
ないでしょうか。香りのある生活は私たちに癒しやリラックスをもたらしてくれますが、嗅覚の
鋭い犬や、代謝機能が人と異なる猫には注意が必要です。そのためには、大切なペットの健康
にも気を配りながら取り入れることが大切です。近頃では、「ペットにアロマは危険」といった
情報を耳にすることも増えてきましたが、実は正しい知識と使い方を身につければ、安全に
アロマを楽しむこともできます。
今回は、犬や猫と暮らしている方が知っておくべき精油の注意点や、安全にアロマを楽しむ
ためのコツについて、解説していきたいと思います。
なぜペットにアロマが危険と言われるのか?
ペットにアロマが危険とされる理由は複数あります。まず理解しておきたいのは、これらの
理由を知ることで、より安全にアロマを使用できるということです。
1. 優れた嗅覚による影響
犬は人間の約100万倍、猫は約10万倍の嗅覚を持っています。しかし、これは単純に「匂いを
強く感じる」ということではありません。実際には、微量の匂い成分を嗅ぎ分ける能力が優れて
いるということです。
実際の匂いの強さの感じ方は、犬で約10倍程度ではないかと言われています。ただし、アロマ
の種類によっては刺激が強いものもあるため、使用量や濃度への配慮が必要です。
2. 代謝能力の違い
問題なのは、人間とペット(特に猫)では有害物質を代謝する能力が大きく異なるという
ことです。犬や猫は、嗅覚がとても敏感なうえに、肝臓での代謝機能が人間とは異なり、精油に
含まれる成分を解毒できない場合があります。とくに猫は「グルクロン酸抱合」という代謝経路
が未発達なため、精油の蓄積による中毒のリスクが高いとされています。
猫の場合:
- 肝臓でのグルクロン酸抱合という解毒機構を持たない
- 脂溶性物質(精油の成分)を無毒化して排出することが困難
- 体内に有害物質が蓄積しやすい
犬の場合:
- 猫より代謝能力は優れているが、人間とは異なる
- 種類によっては毒性のある精油もある
3. 身体を舐める習性
ペットは毛づくろいで身体を舐める習性があります。皮膚に付着した精油成分を摂取して
しまう可能性があるため、使用する精油の品質や安全性が重要になります。
ネコ・犬に危険な精油と成分
以下に猫、犬に注意が必要な精油を挙げてみました。
猫に特に危険な精油
猫にとって特に危険とされる精油は以下の通りです:
絶対に避けるべき精油:
・ティーツリー 主成分: テルピネン-4-オール(40%以上)
特徴: 強い抗菌・抗真菌作用があるが、犬には代謝負担となる AromaticStyle
・ユーカリ 主成分: 1,8-シネオール(70-85%)別名: ユーカリプトール
特徴: 強い清涼感と抗菌作用を持つ 生活の木
・ペパーミント・スペアミント(ミント系全般) 主成分: メントール(30-50%)
その他: メントン、酢酸メンチル、1,8-シネオール
特徴: 強い冷却効果と刺激性がある AromaticStyle
・レモン・オレンジ・ベルガモット(柑橘系全般) 主成分: d-リモネン(70-95%)
その他: β-ピネン、γ-テルピネン
特徴: 光毒性を持ち、皮膚刺激や中毒症状を引き起こす可能性 AromaticStyle
・ラベンダー 主成分: 酢酸リナリル(25-45%)、リナロール(30-50%)
特徴: 鎮静作用があるが、犬には代謝負担となる場合がある AromaticStyle
・シナモン 主成分: シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド、50-75%)
その他: 酢酸シンナミル、クマリン
特徴: 強い皮膚刺激性と毒性がある フロリハナ
・クローブ 主成分: オイゲノール(70%以上)その他: 酢酸オイゲノール、β-カリオフィレン
特徴: 強い抗菌作用があるが、高い毒性も持つ アットアロマ
・ゼラニウム 主成分: シトロネロール(~50%)、ゲラニオール(~20%)その他: リナロール
特徴: ローズ様の香りを持つが、犬には刺激となる場合がある AromaticStyle
犬に危険な精油
犬の場合、猫ほど厳格ではありませんが、以下の精油は避けるべきです:
使用を避けるべき精油:
・アニス 主成分: トランスアネトール(80-90%)
特徴: エストロゲン様作用があり、犬には危険 ナリン
・オレガノ 主成分: カルバクロール(50-70%)その他: チモール(15%)
特徴: 強力な抗菌作用があるが、高い皮膚刺激性 生活の木
・ウィンターグリーン 主成分: サリチル酸メチル(98-99%)
特徴: 天然のアスピリンとも呼ばれ、犬には毒性が高い ナリン
・カンファー 主成分: カンファー、1,8-シネオールその他: リモネン、α-ピネン
特徴: 神経系に強く作用し、痙攣などを引き起こす可能性 インセント
・クローブ 主成分: オイゲノール(70%以上)その他: 酢酸オイゲノール、β-カリオフィレン
特徴: 強い抗菌作用があるが、高い毒性も持つ アットアロマ
・ペニーロイヤル 主成分: プレゴン(ケトン類)
特徴: 極めて高い毒性があり、中毒死の事例もある
ペニーロイヤルミント – Wikipedia
・柑橘系(少量なら問題ないが注意が必要)
犬に精油が危険な理由
犬が精油を代謝できない主な理由は次の通りです:
- テルペン類の代謝困難: 犬は精油の主成分であるモノテルペン炭化水素類を効率的に分解できない
- フェノール類の毒性: オイゲノール、カルバクロールなどのフェノール類は肝臓に大きな負担をかける
- ケトン類の危険性: プレゴンなどのケトン類は神経毒性がある
- 肝臓での解毒能力の限界: 犬の肝臓は人間ほど効率的に精油成分を処理できない
これらの精油は、芳香浴程度の少量使用でも犬によっては危険な場合があるため、使用は避けることが推奨されています Office Guri。
特に注意すべき成分
以下の成分は特に毒性が高いとされています:
- フェノール類:肝臓に負担をかける
- ケトン類:神経毒性がある
- リモネン:柑橘系に含まれ、猫には特に危険
- ピネン:針葉樹系に含まれる
中毒症状を見逃さないために
精油による中毒症状は摂取後2-8時間で現れることが多いとされています。以下の症状が見られ
た場合は、すぐに獣医師に相談してください。
急性症状
- よだれを垂らす(流涎)
- 嘔吐・下痢
- ふらつき(運動失調)
- 筋肉の震え
- 食欲不振
- 元気消失
重篤な症状
- 呼吸困難
- 意識障害
- 痙攣
- 異常行動
- 失禁
これらの症状が見られた場合は、直ちに動物病院を受診してください。
安全にアロマを楽しむための方法
ペットがいる家庭でも、適切な方法でアロマを楽しむことは可能です。
1. 品質の高い精油を選ぶ
食品添加物グレードの精油を使用する
- 万が一ペットが舐めても安全
- 100%天然の植物から抽出されたもの
- 合成香料は絶対に避ける
2. 使用方法に注意する
芳香浴の場合:
- ペットがいない部屋で使用
- 換気を十分に行う
- ディフューザーの使用時間を制限(30分程度)
- ペットの様子を観察
直接塗布は避ける:
- ペットの皮膚に直接精油を塗布しない
- 飼い主が使用後は手をよく洗う
3. ペットの個体差を考慮する
- 年齢(子犬・子猫、高齢ペットは特に注意)
- 体重(小型犬・猫はより注意が必要)
- 健康状態(基礎疾患がある場合は避ける)
- 個体の敏感さ
ペットに比較的安全とされる精油
犬に比較的安全とされる精油:
- ラベンダー(真正ラベンダーのみ、少量)
- カモミール(ローマンカモミール)
- ローズマリー(少量)
注意点:
- 「比較的安全」であっても、使用前は必ず獣医師に相談
- 初回使用時は特に慎重に観察
- 猫には基本的に精油の使用は推奨されない

掃除用品も無香料のものを選ぶ、なども大切ですね!
ペットが精油を誤飲・誤吸入してしまった場合
・冷静になる
・使用した精油の種類・量を確認
・ペットを新鮮な空気のある場所に移動
・皮膚に付着した場合は、ぬるま湯で洗い流す
・無理に吐かせない
緊急時は迷わず動物病院に連絡しましょう。夜間・休日でも対応してくれる病院を事前に調べておくことをおすすめします。
参考文献
まとめ
ペットと一緒にアロマを楽しむには、正しい知識と慎重な使い方が欠かせません。特に猫には
精油の慎重な使用が重要で、犬でも種類や使用方法に十分注意が必要です。使用にあたっては、
高品質な食品添加物グレードの精油を選び、アロマディフューザーの使用時は換気を十分に行う
などの注意が必要です。また、ペットの体に直接原液を塗るのは避けさけましょう。
香りに対してペットの様子をよく観察し、異変を感じたらすぐに使用を中止し獣医師に相談する
ことが安心です。
ペットは大切な家族だからこそ、安全を最優先にしながらアロマの香りを上手に取り入れて、
穏やかな暮らしを楽しんでいきましょう。
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